包丁の基本・しつらえ


 日本料理の基本的な考え方を表す言葉に「割主烹従」があります。「割」は「さく」
とも読み、引き裂くの「さく」です。「烹」は「煮る」の意味ですから、引き裂くのが主で、
煮るのは従ですよ、と言っているのです。

つまり、刺身のように素材を切ってお出しする生のままの料理が主役で、煮たり、
焼いたりの火を使った料理は従ですよ、という意味です。昔から、刺身は日本料理
の主流であり、煮物や焼き物よりは高い地位を与えられてきました。

 刺身包丁は片刃であり、包丁を、刃を下に立てて握ると、上から見て左側は刃が
ついておらず、右側に刃がついています。刃のついていない方を「陰」、刃のついて
いる方を「陽」といいますが、これは中国の陰陽思想からきた考え方です。そこから
陰の包丁、陽の包丁という呼び方がされるようになりました。

 陰の包丁とは、陰の側が上になる使い方で、そぎ造りの時の包丁がそれです。
鮃などの白身の、身がかたい魚を刺身にする時に、この切り方をします。厚みが
ある方が向こう側になるように置き、包丁を右に寝かせ、左手を切りに身に添え、
包丁を刃元から刃先まで長く使って切ります。
 

一方、平造り(引き造り)は陽の包丁で、力強く切ることができます。引き造りはさらに、
「引き送り」と「引き止め」に分けられ、引き送りは、魚の皮ついた方を上、厚みがある方
を向うにして置き、柵の右側から厚めに切り、刃元から刃先まで長く使って引き切って
から造り身を右に送る方法。

引き止めは、切ってから包丁を右に送らずに止める方法で、
糸造りとか角造りなどがこれにあたります。
 いずれにしても、刺身で大切なのは、食べやすさ
を第一に造ること。

 「食べやすく造る」このための工夫が包丁さばき一つにも表れています。 
 


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

CAPTCHA